地方公務員の定年延長で退職金は変わる?
退職金がもらえる時期を知りたい!
税金ってどれくらい引かれるの?
公務員の定年延長が2023年度(令和5年度)から始まりました。
特に、50代の定年まじかの人にとっては、定年延長後の退職金の金額やもらえる時期が気になりますよね。
そこで今回は
定年延長によって退職金の額やもらえる時期、税金はどうなるのか、解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
地方公務員の定年延長!でも退職金の額は減りません
結論から言うと
定年延長になっても退職金は減額されません。
通常、退職金は次の計算方法によって算出されます。
①基本額(退職時の給料月額×支給率)+②調整額(区分月額×月数)
支給率は、退職の種類(自己都合退職、勧奨退職、定年退職)、勤続年数によって変わります。
定年退職の支給率は、勤続年数25年では33.27075、勤続年数35年以上は一律47.709となります。
60歳を過ぎて定年前に自己都合で退職しても、定年退職として扱われますので、退職金は減額されません。
また定年延長で60歳を過ぎると、給料がこれまでの70%に減額されます。
それでも、退職金を計算する時に使う「退職時の給料月額」は、給料が70%に減額される前の給料を適用する「ピーク時特例」を受けることができます。
なので
定年延長で給料が減っても退職金は減りません。
地方公務員の定年延長後の働き方の違いによる退職金の額やもらえる時期
それでは、実際に定年が延長された後の退職金の金額やもらえる時期について、次の例を参考に解説します。
- 1967年度(昭和42年度)生まれ
- 定年退職年齢:65歳
- 60歳時の給料:400,000円
- 60歳時の勤続年数:38年で休職や停職等がない
- 60歳前5年間の職位:課長2年、課長補佐2年、係長1年
退職金の額
Aさんの退職金の金額は、21,229,200円になります。
①基本額 | 400,000円(給料月額)×47.709(支給率) =19,083,600円 |
②調整額 | 43,350円(課長)×24月+32,500円(課長補佐)×24月+27,100円(係長)×12月 =2,145,600円 |
合計 (①+②) | 19,083,600円+2,145,600円 =21,229,200円 |
調整額は、60歳前5年間の職位ごとの在職年数(月数)によって変わります。
勤務年数が35年に満たない人の退職金は定年延長により加算される
支給率は、勤務年数が35年以上で最も高い47.709となり、基本額が最高となります。
でも
60歳の時点で勤務年数が35年に満たない人は、引き続き60歳以降も働くことで退職金を上乗せすることができます。
例えば、今回のAさんのケースと同じ1967年度(昭和42年度)生まれで、60歳時点の勤務年数が30年(支給率:40.80375)の人が、定年の65歳まで働いた場合、基本額は、1,933,470円増加して18,254,970円になります。
①60歳までの 退職手当 | 400,000円(給料月額)×40.80375(支給率) =16,321,500円 |
②60歳以降の 退職手当 | 280,000円(給料月額×0.7)×(47.709-40.80375) =1,933,470円 |
③調整額 | 43,350円(課長)×24月+32,500円(課長補佐)×24月+27,100円(係長)×12月 =2,145,600円 |
合計 (①+②+③) | 16,321,500円+1,933,470円+2,145,600円 =20,400,570円 |
調整額は変わりませんが、今回のケースでは1,933,470円も退職金を増額することができましたので、定年延長によるメリットといえます。
退職金がもらえる時期
退職金がもらえる時期は、60歳以降の働き方によって変わります。
今回もAさんを例に、次の3つのケースで解説します。
- 60歳で退職した場合
- 定年(65歳)までフルで働いた場合
- 定年前再任用短時間勤務職員として定年(65歳)まで働いた場合
60歳で退職した場合
これまでと同様、60歳になって最初の3月31日に退職した場合は、退職の1か月後までに振り込まれます。
つまり
2028年(令和10年)の4月中に退職金が振り込まれることになります。
定年退職(65歳)までフルで勤務した場合
定年退職(65歳)となる年度の3月31日に退職した場合も、退職後の1か月後までに振り込まれます。
なので
2033年(令和15年)の4月中に退職金が振り込まれることになります。
定年前再任用短時間勤務職員として定年(65歳)まで勤務した職員
60歳になって最初の3月31日に退職した後、定年前再任用短時間勤務職員になった人は、60歳で退職した人と同じです。
なので
2028年(令和10年)の4月中に退職金が振り込まれます。
地方公務員の退職金にかかる税金(所得税・住民税)
退職金をもらうと所得税と住民税がかかります。
でも、退職金は、長年の勤労に対する報奨として一時的に受け取るものなので、勤務年数に応じた退職所得控除額が設けられています。
控除額は次のとおりです。
勤続 年数 | 退職所得 控除額 (万円) |
25年 | 1,150 |
30年 | 1,500 |
35年 | 1,850 |
36年 | 1,920 |
37年 | 1,990 |
38年 | 2,060 |
39年 | 2,130 |
40年 | 2,200 |
控除後の税額は次の表のようになります。
課税退職 所得金額 (万円) | 税率 (%) | 控除額 (円) |
195万円以下 | 5 | 0 |
195万円を超え 330万円以下 | 10 | 97,500 |
330万円を超え 695万円以下 | 20 | 427,500 |
695万円を超え 900万円以下 | 23 | 636,000 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33 | 1,536,000 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40 | 2,796,000 |
4,000万円超え | 45 | 4,796,000 |
実際、所得税、住民税がいくらになるのか、具体的に説明します。
所得税の計算方法
所得税は、退職所得控除後の金額の2分の1(千円未満は切り捨て)の額に5%をかけた金額で、さらに2.1%をかけた復興特別所得税がかかります。
Aさんの場合は、退職金が21,229,200円、勤務年数が38年なので、退職所得控除額は2,060万円となります。
退職金に退職所得税の控除額を差し引いた2分の1の金額314,000円が課税退職所得の金額になり、税率をかけた16,029円が所得税(復興特別所得税を含む)として源泉徴収されます。
住民税の計算方法
住民税は、課税退職所得の10%になるので、31,400円が源泉徴収されます。
結局、Aさんが受け取る退職金は、税金の47,429円を引いた21,181,771円となります。
まとめ:地方公務員の定年延長後も退職金の減額はなく増える場合もあり
公務員の退職金は、60歳まで勤めると課長職で給料が40万円の場合は、2,130万円ほどです。
定年延長によっても減ることはありません。
勤務年数が35年に満たない人の場合は、60歳以降も引き続き働くと、退職金を上乗せすることができます。
退職金のもらえる時期は
①60歳で退職、②定年前再任用短時間勤務を選択した人は、60歳を迎えた翌年度の4月中
60歳以降も引き続きフルで働く人は、退職の翌年度の4月中に支給されます。
税金も退職所得控除が設けられています。
60歳まで勤められた課長クラスの人は4~5万円で、それほど大きな負担にはなりません。
結局
公務員を定年まで勤めあげると2,000万円を超える金額を退職金としてもらえます。
なので
60歳以降のセカンドライフを豊かに楽しく生きていくための資金として、有意義に使いましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。